プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

バッチ処理のあれこれと、SLA

風邪引いてしばらくブログ更新サボってました。

上記記事について、気になったので。ブコメで言及ももらったし。

 

ウィキペディアのバッチの利点って若干記載が古い

  • 多くのユーザーがコンピュータのリソースを共有できる。
  • 処理をコンピュータのリソースがあまり忙しくない時間帯(多くは夜間、休日)にシフトできる。
  • 人間がついていなくてもコンピュータのリソースが暇にならないように最大限有効活用できる。
  • 高価なコンピュータをフルに活用することで費用対効果の効率向上に寄与する。

バッチ処理 - Wikipedia

 

バッチをリソース目的だけで使うってずいぶん古い話だなあ、と思って編集履歴をたどってみたら、2006年の記載でしたか。

記載をたどってみると分かるんですけど、上記の内容って「メインフレーム」のバッチ処理に対する利点なんですよね。

 

そういった意味では、現在のバッチの設計とはちょっと概念が違うんじゃないかなって思います。

 

分散アーキテクチャの静的同期処理としてのバッチ

じゃあ、現在バッチはどのような使われ方があるのか?

実際にバッチを設計している現場だと、分散アーキテクチャにおけるリコンサイル処理で利用される場面が結構多いです。

 

具体的には

  • SOAのような分散アーキテクチャにおける、各サーバに分散されて格納された日中フローデータのズレ・不整合のリコンサイル
  • 企業間取引における日中取引結果の各企業間でのリコンサイル
  • 金融取引における清算機構の清算結果と日中取引結果のリコンサイル

など。

これをミッションクリティカルなシステムで実現しようとした場合、夜間ぐらいしか業務を止めるヒマがない=リコンサイルを夜間バッチで処理せざるを得ない、なんて状況になったりします。

 

でもこれらリコンサイルって、「正常なデータを企業間システムやSOA内の分散サーバにて同期を取る処理」なわけで。

業務的な言葉を一旦外せば、分散アーキテクチャ内を刻一刻と動くデータを処理するリアルタイム処理に対し、静的な同期によりデータ不整合を防ぐバッチ処理、といった形となります。バッチは、システムにおけるデータ管理・自己復旧の技術となるわけですよね。

 

まあ、何が言いたいかというと、バッチ処理は、メインフレーム時代のリソースシフト目的の処理から、分散アーキテクチャにおけるデータ管理技術に転換して来ているんじゃないかな、と言えます。

 

※他にも、システムの自動リリースや自動構成管理変更などの運営自動化などのバッチの使われ方もありますが、きりがないので除外で。

ハンズの本当の評価

で、悪玉にされがちな夜間バッチですが、ハンズの話で本当に注目するべきところは「夜間バッチを廃止したこと」ではなく「夜間時間帯をバッチを使用しないことで突き抜けリスクを受け止めるSLA管理」に着目するべきだと思います。

 

ぶっちゃけ言ってしまえば、上記の通り業界間リコンサイルが必要となるような大型のエンプラ系基幹システムでもない限り、夜間バッチをなくしてもなんとかなる場合って結構あるんですよね。特に社内独立で動いているようなSMBのシステムなら。

 

ただ、夜間バッチをなくせない理由って技術的な面よりか「社内のユーザ部門からの朝業務開始できないかもしれない不安」とかのSLAにより実現できない場合が多かったり。

言い方を変えれば、夜間バッチをなくした場合に発生するリスクをユーザ(この場合は社内部門)とシェアし、メリットを感じさせることができれば実現できると言える。

 

ハンズが夜間バッチを廃止できたのも、そういったユーザ部門掌握がきちんととれたから、と言うのは大きいんじゃないかな。

でなきゃ、夜間バッチを廃止することで「中度リザーブド60万が、夜間8時間停止で45万になります」なんていっても、「たった15万ぐらい安くなるためだけにリスクが負えるか」なんてユーザ部門から反発を食らってしまうわけで。

 

 

これはハンズの自社システムの例だけど、SIerの受託でも同じかな。

ユーザときちんとSLAを握りさえすれば、「夜間バッチにて、多少トラブルが発生しても大勢に影響がなければ翌日フォローで対応する」なんて感じで、夜間コール数年間0件で運用できるようにすることも難くなかったりもします。

 

ユーザビリティを下げないようにするためには夜間バッチが必要、でも、極力運用負担を減らしたい、なんてニーズはよくありますよね。

自分がコールで叩き起こされるのが嫌で、どうすればよいかさんざん考え続けたのですが。。。

重要な事は、夜間バッチを廃止することではなく、皆が幸せになれる適切なSLAを考えるか、じゃないかな。

 

まとめ

まあ色々書きましたが

  • Wikipediaの内容は最新じゃない場合もあるからあんまり鵜呑みにしないほうが
  • バッチ処理はリソースシフトだけではなく、分散アーキテクチャを管理するための技術としての利用方法を固めつつある
  • 夜間バッチ廃止に拘るのではなく、適切なSLAを考えることが重要

なんて感じかと。

 

とくに3つ目が一番重要で、夜間バッチが悪玉にされるのも「過剰なまでに高く厳しいSLA」が原因だろうなってつねづね思うわけで。

これを、関係者が「まあいーか」といえるようなラインまで調整できれば、多分色々な苦難が解決されると思います。

 

以上

 

 

 

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