貸与型奨学金がないと貧乏人が困る理由
奨学金制度たたきはいい加減やめませんか - 本山勝寛ブログ: BOYS, BE HUNGRY!〜世界を愛する学び録
はてブコメントを見ると、奨学金という制度と、就職できないという社会情勢と、学費が高いという学校運営に関する不満と、ナニが何やら訳がわからない状態。。。
う~ん、カオス。
過去とは全く違う奨学金の今と未来を考える(10/12シンポまとめ) - Togetter
問題を語っている弁護士さんは、弱者保護が命だから主張しているだろうけどさ。。。貧乏でも、賢く強かな学生は、貸与型奨学金を有効に利用しているってのに。極端に言えば、奨学金を有効活用できなかった人だけ集めて奨学金の是非を問題としているわけで。だから、余計話が発散するんだよね。。。
と言うか、奨学金でうまくいくためにはどうすればよい、どういう条件なら利用できるのかという建設的な議論がない。。。
というわけで、就職氷河期だった学生時代(といっても10年ちょい前で貸与型奨学金が主流だった時)に、奨学金を有効に利用するためにはどうすればよいか、と考えたのを思い出しつつ整理してみました。あんまり制度は変わってないので、現代でも通用するかなと思います。
簡単にだけど、想定される関連図を描いてみるとこんな感じかな。
大学に奨学金を使わない手段(自費、授業料免除、特待生など)で進学を青の領域、
奨学金を使う手段で進学を赤の領域で表現します。
右に行くほど学力が高く、上に行くほど財力が高い状態。
要は、右に行くほどお利口で、上に行くほど金持ちってこと。
財力か学力があれば、奨学金を使って進学する反面、学力があるが財力がない場合に奨学金を利用する想定です。
同じ収入でも学力が高ければ進学可能な大学が増加する(=低学費の大学を選択できるようになる)ことから、概ね上記のような斜め線を伴う関係になるかと思ってます。斜め線の角度についてはいろいろ議論はあるかと思いますが。。。
私は上記グラフに照らし合わせて、自分の進路をどうするか戦略立てたりしてました。大企業就職できそうラインより右側であれば奨学金を使うのも良いかな、なんて。
で、皆が主張する内容を上記図と照らしあわせて考察します。
その1 貸与型奨学金をやめて給付型にするべきだ
予算枠が変わらなければ、当然交付対象が激減します。
給付型の場合、単純に考えれば、現在の滞納率7%を100%にするのと同じ効果となるため、給付できる上限は1/10以下となります。
更には、給付だったらもらってしまおう、と本来であれば別に奨学金が不要な学生まで、奨学金をもらうこととなります。
要は、奨学金をなくす、縮小することと同じとなります。
確かに、問題となっている領域のメンバーが減少することとなりますが、同時に貧乏だけど大学行く学力がある学生が減ることとなるため、奨学金の趣旨と反することとなります。
その2 完全無利子にするべきだ
完全給付にするのと同じで、交付できる原資が減少するため、奨学金を交付可能な領域が小さくなります。
また、有利子という「壁」がなくなるため、より高財力、低学力の層まで奨学金を使おうとします。三角形がより細長くなるわけです。
更には、1と同様に従来奨学金が不要であったけど何とかなっていた学生までが奨学金を利用するようになります。
つまり、本来奨学金が必要となる層に金が回らなくなることはその1と同じ。
ヘタしたら低学力層の貸出が増加することで、問題が深刻化する恐れがあります。
これまた奨学金の趣旨と反します。
上記の通り、奨学金に文句を言ってもなんの解決にもならないことがわかるかと思います。限られた予算の中で、「能力を持った人間に高等教育を与え、社会に役立てる」という目的からすると、有利子貸与型はどうしても避けられないわけですね。
と言うか、本来であれば、より学力の高く貧困を抱えている層にお金を配りたいわけですね。効率を上げるのであれば。返済能力がない人間が借りている事が問題ですね。これを日本学生支援機構側に求めるのはちょっと厳しいかなと思います。学生支援機構側から「あんたはバカ大学なので奨学金交付に適しません」「あんたの学科でどうやってこの先返済できる職につけるの」とはいえないでしょ?てか、大問題になるし。
就職できるできないも景気によって変わるので、学生支援機構側では判断できないし。
予算を増やせば良い?ただでさえ苦しい生活なのに、これ以上税金が上がるのはゴメンですが。。。
予算執行に無駄が多いだかどうたらって話は、もう奨学金の話の枠外ですよ。
生保予算が足りないだとか、社会福祉予算が足りないだとかと同類。「大きな政府、小さな政府」論の話題の一部となります。議論は、枝葉である奨学金問題の中ではなく、本題側でどうぞ。
上記のように考察すると、やっぱり丸枠で囲んだ問題(奨学金が返せない問題)は、本人の自己責任としか言い様がなくなるんですよね。。。
つまり、
- 自分の力が奨学金を返せる適切な水準であるか、リスクを許容出来るか判断できなかった問題(住宅ローンなどの過剰ローンと同じですね)
- 自分の力を貸与型奨学金による学費が不要となる水準まで高めることができなかった問題
- 自分のやりたいこと(就職に不利と言われる学科への進学など)を自分の対処可能な範囲から超えて優先してしまった問題
などとなるわけです。
しいて言うならば、奨学金を含めた借金をすることがどういうことから、理解させることができなかったのは周りの責任とも言えますが。。。
ちなみに、
- 学費が高い(青の領域が狭い)。
- 企業が大卒以上(高技能者)だけしか求人しない
- 学生が大学進学以外の道を見いだせない。
ってのはまた別問題だと思いますし、こちらについては課題・問題があるとの認識です。これはまた別の機会で。
いずれにせよ、奨学金制度の問題と行ってしまうのはただの言いがかりですね。
以上