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プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

日本のIT業界の収益性の悪さは業界構造の悪さって本当?

テクノロジー

アナリスト・金谷敏尊が斬る! 日本のIT業界に未来はあるのか:【第1回】ここが変だよ、日本のIT市場 (1/2) - ITmedia エンタープライズ

 

 う~ん、気になる記述があったので。

 

日米IT業界の利益率を比べるのはあまり意味が無い

北米では、大手SIベンダーであるIBMAccentureCSCの営業利益率はおおよそ15%前後であり、Oracle、SAPのような大手ソフトウェアベンダーでは35%前後の高利益率を維持している。これに対して、日本の名だたるITベンダーはどうだろう。NTTデータ(6.4%)、日立製作所(4.3%)、NEC(3.7%)、富士通(2.3%)と営業利益率は桁がひとつ異なるのが現状だ(総務省「平成25年版情報通信白書」に基づく)。

 

元記事では日本のIT業界と米国のIT業界を比較し、日本のIT業界は利益率が低く、それは日本のIT業界の構造的な問題が原因と分析してます。

 

ただ、これには大きな落とし穴があることに注意です。

まず、日本と米国ではそもそも利益率を単純に比較しないほうが良いです。

 

昔から言われてますが、IT業界にかかわらず、日本企業は米国企業よりも利益率が概ね低く、大体半分程度となってます。 

原因として、

様々な理由が考えられるが、資本コストの低さが一つの引き金になっているとの見方がある。株主の要求する利益水準が低いことが、企業に利益率が低い投資プロジェクトを選択させているというものである。

*1

 と言われてたりします。

 

また、法人税率も高く、利益を上げ法人税を取られるぐらいなら、人件費や福利厚生費として従業員に還元した方がマシ、なんて考えも聞くことがあります。税金払いたくないので製造原価を高くしてしまおうってわけです。

※労働配分比率からするとどこまで本当かって気はしますが。。。

 

こういったこともあり、日本は米国より営業利益率が低くなっているのも実情。

なので、各企業の収益性を単純に比べても、業界構造の問題なのかエクイティ政策の問題なのか、それ以外の経営方針の問題か、判断することができずあまり意味は無いです。

 

※極端な話、個々企業の比較をした場合、Amazonなんて利益率1%だったりするので、Amazonの企業構造は日本以上に悪い、なんてなってしまいますしね。

 

※また、恐ろしいことに国の白書でも単純な利益比較って行ってたりするんですよね。。。それって制度を変える気がなく単純に税金欲しいってだけじゃないかと。。。

 

日米のIT業界の収益性を比較してみる

さて、せっかくなので日米のIT業界の収益性を比較してみたいと思います。

といっても、前述のとおり単純に比較することはできません。

そこで、日米の全業種平均と比較して、IT業界の収益性の平均との良し悪しを調べてみようかと思います。平均との相対値ならば国特有の問題の影響が薄まるからです。

 

 日本の営業利益率      : 2.5%程度

 日本のIT業界の営業利益率 : 4.3%程度*2

 日本のIT業界における営業利益率の全業種平均との比率

 = 4.3 ÷ 2.5

 = 1.72

 

 米国の営業利益率      : 8%程度 ※22年度

 米国のIT業界の営業利益率 : 12%程度 ※23年度*3

  米国のIT業界における営業利益率の全業種平均との比率

 = 12 ÷ 8

 = 1.5

 

上記の通り、日米ともにIT業界は国内平均よりも高収益な産業となっているわけです。

このように、「日本のIT企業の収益性が悪い → 日本のIT業界の構造が悪い」と言うのは些か危険な考察かなと思われます。

 

まあ、日本全体が非効率的で、その中で比較しても井の中の蛙じゃないかってのはあるかもしれませんけど。

 

 

米国は企業間の格差があり下位企業はひどいことに

実は、米国はTOP企業の収益性はトコトン良いものの、下位企業の収益性はひどいことになっていることに注意です。

 

日米の利益率については、日本のほうが低いとよく言われてきた。たしかに、トップ企業同士を比べるとそういえるし、国全体の平均値でもアメリカ企業の利益率のほうが高い。我々のプロジェクトでもそれを確認している。しかし、下位企業の比較をすると、日本のほうがうんといいのである。というより、アメリカ企業の下半分は惨憺たるありさまである(もっともIT産業では、日本の上位企業のほうがアメリカの上位企業よりも00年以降は利益率が高い)。

米国IT産業 「利益率格差」の衝撃 : プレジデント(プレジデント社)

ちょっと古い記事ですが。。。

 

米国の場合、勝者総取りみたいなところもあり、IBMなどTOP企業の収益性は良いのですけど、下位企業については市場からも撤退できずにジリ貧の中、赤字を拡大し続けているとの問題があったりします。

 

こういった点を考慮すれば、元記事のような

大手ベンダーがこのような状況にある中、中堅・中小ベンダーにおける収益性は望むべくもない。

ってのは(米国と比べた場合)決して正確ではないかなと思います。

 

 

まとめ

まあ、色々書きましたが一言で言うと元記事の大前提である日本の企業の収益性は米国よりも悪いってのはホントかな?と疑わしいです。

なので、そこから導かれる考察はちょっと微妙かなって感想。

 

※そもそも、一部事例をもって業界全体語るのは分析者たるアナリストとしていかがなものかって気がしますが。。。

 

米国みたいに一部の勝者と大勢の敗者ってきれいに別れているのではなく、中間層でわさわさとみんなうまく食べていけるようにしている構造って感じですかね。

業界としての収益性が悪いってよりか、大手に収益が集中してないって感じで。

 

要は、日米の収益配分モデルの違いってだけですね

 

ま、論理展開に疑問があるからって、現在のIT業界の構造に問題が無いわけじゃあないことも確か。元記事の後半にあるような内容の幾つかは確かに問題と認識しているものもありましたし。

 

そういった意味では、ガラパゴスいって単純にアメリカ最高って比較するよりも、日本のIT業界全員がうまく生きていける独自の道を探すのも悪くないんじゃないだろうかって。

 

以上

 

 

 

 

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