プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

多重請負と騒ぐITpro、もういい加減にしなさい!

タイトルは真似してます。

 

 

今回の記事はいつにもましてヒドイな~。

 

同じ日経記事なのに

供給より需要が多いのであれば値を上げればよいだけであり、“売るもの”が無いのなら売らなければよいだけである。技術者不足で困るのは客側なのだが、ITベンダーは御用聞き商売ゆえか、客側にマインドコントロールされ、「大変だ。大変だ」と騒いでいるのだ。 

 ご自身の媒体のITPro。日経系列だよね。。。

およそ一年前の記事なのでもうお忘れか。

 もう既に入札不調や案件見送り、受託価格向上なんてのは発生しとりますがな。公共システムだってしかり。別に無理して売ろうとはしてないわけで。

 

ここでいう大変だ、ってのは「儲け時なのに儲けられないのは大変だ」ってことでしかないですね。

 

資料はきちんと読もう

しかし、この調査で「不足している」と答えているITベンダーは“わずか”6割にすぎない。つまり、残りの4割のITベンダーは少なくとも「足りている」ということになる。

 「なんだ。技術者不足は『2015年問題』などと大げさに言うほど深刻じゃないじゃん」と早合点してはならない。実は、これこそがIT業界の SIガラパゴス、つまり多重下請け構造の為せるワザなのだ。ほぼ断定的に言えるが、「足りている」とするITベンダーの多くは、元請けとなるSIerなど大手ITベンダーで、「不足している」と回答したITベンダーのほとんどは下請けベンダーのはずだ。

 

いやいや、元の帝国データバンクの調査資料ちゃんと読みましょう。

中小企業を中心に1万794社から回答を得ました。 

企業の約40% 「正社員不足感じる」 NHKニュース

 

足りているって答えているベンダーも、大多数は中小IT企業なんですよ。

 

 

この手の調査資料を読むときには、いくつか注意点が必要。

  • 現れた差は業界特有なのか、日本共通なのか
  • 景気動向の問題なのか、それ以外の原因があるのか

などなど。

 

この方は、「2015年問題」を歪めてしまっているのですけど、元々の問題としての2015年問題が隠されております。

戦後生まれのいわゆる「団塊の世代(1947(昭和22)年~1949(昭和24)年生まれ)」が65歳以上となる2015年

わが国の高齢者介護における2015年の位置づけ

 

上記の不足している、の中には、元々の問題としての2015年問題としての団塊の世代の定年延長後の定年を迎える時期だったり、そもそも中小企業DIの改善に伴う投資意欲増加などといった意味合いからの人手不足の意味合いが大きい。

 

59.3%のITベンダーが従業員の不足を訴えており、この割合は同じく人手不足に悩む建設業と比べても5ポイント近く高い。

今回の調査で、全体平均で「人手不足」を答えたのは37%。これをベータとみなせば、IT業界特有の事情での人手不足は22ポイント。

そもそも、IT業界自体の成長率は、日本のGDP成長率よりも高いわけで、単純に成長市場としての人手不足もある。

これを言い換えると、「成長率がマイナスとなっている建設業と、GDP成長率よりも高い成長のIT業の差はたったの5ポイント」ってことだよね。

供給圧力のためしぶしぶ人を増やすってだけでなく、将来の投資に向けての人員確保の要因も透けて見える。

 

しかも、これら中小IT企業に含まれるのは、別にSIベンダーだけじゃあない。ネット系企業やソフトウェア業等でも情報サービス業に含まれている会社はいくらでもあるわけで。

 

こういった内容を考えたら、きちんとロジカルな思考ができる人なら、前述のような記述はとてもできない。てか、ただの確証バイアスじゃないですか。

 

何が「多重下請け構造の為せるワザ」なのか。

 

 

そもそも「正社員」を雇用する意図

今回の技術者不足は、SIガラパゴスの最後の宴に咲いたアダ花である。「東京オリンピックが開催される2020年までは大丈夫」と楽観論を唱えるITベンダーの経営者もいるが、もしそうだとしても、その先はどうなるのか。団塊の世代後期高齢者に移行する2020年代には日本経済は急速に下降線をたどり、SIのような古色蒼然としたビジネスは大絶滅のときを迎えているだろう。

 

この人はどうしてもオレオレ定義の「2015年問題」が確実に起きると確信している模様なのでしょうけど、そんなもの誰もまともに信じてはいません。

 

今回の帝国データバンクの調査を見れば明らか。「技術者」ではなく「正社員」が不足している、つまり、現在の需要増を短期的なものではなく中長期的なもので見ているってことですよね。

本当に、2015年問題がおきて需要が今後シュリンクするなんて考えていたら、正社員ではなく別の形態での人員確保にて需要が急増してます。

 

2015年問題がおきている、見たことかって意気込んでいるみたいですけど、誰も信じてもいない現状もきちんと見たほうが良いかと。

 

 

まとめ

需給関係が圧倒的に有利で労働集約から脱却するチャンスなのに、好況のときほど労働集約型産業の地金が出る。相変わらずのアホである。

 

SIの仕事が動向に応じて人の増減が発生することを指して、「労働集約型産業」なんていう人がいます。

 

しかし、「知的集約型産業」を定義した通産省産業構造審議会では「知的集約型産業とは、知的労働を中心とする労働集約型産業」と記述しているんですよね。*1

そりゃそうだよね。知的活動は人間が行うわけなんだから。

 

SIerだってなんでも力技でやっているわけじゃあない。

オッサンのチームだって、繰り返し作業する中での定型作業なんかは自動化している。保守の現場だから。

 

ユーザがほしいのは出来合いのパッケージではなく、どこにもない新しい情報システムがほしいというニーズが高いから。景気後退期の時期から、景気拡大期になったらなおさら。攻めのITが欲しくなるわけで。

新しいシステムをつくろうとする受託の現場は、とかく技術者が多数必要になることが多いです。 

そういった仕事は新しいことだらけで、定型化出来る余地なんて殆ど無かったり。下手に自動化を行おうとしたら、余計に負荷が高くなることだってある。難易度は跳ね上がる。でも、一セット1万円なんて安値でなく、数百万、数千万、数億といった報酬がもらえる。

 

現在、労働者不足が発生しているのは、「定型な単純作業を人手で仕事しているから」なのか、「非定型な新たな知恵が必要な仕事を行っているから」なのか、きちんと見極められているのかな。

 

ユーザのニーズも、価値の源泉も理解せずに「労働集約型産業の地金が出る。相変わらずのアホである」なんていう人は、まあその。。。色んな意味で残念ってもんじゃあないですかね。

 

 

以上

 

 

 

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