プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

特定労働者派遣が与えるSI業界へのインパクトの解説と雑感

News & Trend - 「特定労働者派遣」制度が廃止へ:ITpro

 本日割と話題になったニュース。来年度、特定労働者派遣制度が廃止になる模様です。

SIerに勤務するオッサンとしても無関係じゃないニュースです。ちょっと分析してみましょうか。

 

SI業界の雇用のおさらい

よく言われるように、SI業界では請負、派遣といった労働者の流動化された契約関係で成り立っております。

 

これは、SI業界ではプロジェクト単位に必要人員が大幅に変化する特色があるためです。

忙しい時は人手不足でも、暇な時は人あまりなんてのもザラ。

なので、人員を流動的に変更できるよう、請負、派遣といった雇用形態が頻繁に利用されます。

 

SI業界で主に結ばれる契約形態は以下のとおり。

  • 請負契約
  • 準委託契約(SES契約なども含まれる)
  • 派遣契約(主に特定労働者派遣だが、一部一般労働者派遣もあり)

コンピュータ関連は特定派遣業に含まれる業種となります。このため、派遣契約は主として特定派遣により賄われてきた経緯があります。*1

 

特定労働者派遣が問題となった理由

SI業界では、以前「偽装請負」の問題が発生した時、前述の契約形態が問題となったことがあります。

オッサンの会社でも、パートナー会社が請負か、派遣かでどうやって契約を結ぶんだ、ということでもめたことがありました。

 

さて、偽装請負が問題となった時、一部の企業ではきちんとした請負対応するようにしようとして指揮命令系統の見直しを行ったのですが、また一部の企業では、請負契約を派遣契約として結び直すことで対応していた企業がありました。

 

オッサンが認識している限りですが。。。

  • 大手や中規模以上の比較的大きい企業、派遣先企業がウォーターフォール型開発を主体とした企業では、請負を主体とした契約
  • 個人や比較的小規模の企業や、派遣先企業がアジャイル開発などを主体としたメンバーの密結合なコミットメントが必要で請負契約が困難な開発体制の場合は派遣を主体とした契約(準委託契約の場合もあり)

みたいな感じで対応していた形となります。

 

この結果、近年IT業に占める特定労働者派遣が増加しました。

上記のような状況では、大手を相手する企業を中心に請負で対応する企業が集約され、柔軟に対応可能となる特定労働者派遣に転換することで仕事を求めるようになったからです。

また、元記事にあるように一般労働者派遣よりも開業が楽だった、ということで一般派遣から転換した事例もあるようです。

参考:http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2013/report130419.pdf

 

結果、質の悪い派遣会社が横行するようになり

厚生労働省は5日、届け出制で開業できる特定派遣事業を廃止し、すべての派遣会社を許可制の一般派遣事業に移行させる方針を固めた。「常時雇用」を前提としているはずの特定派遣事業で、有期雇用契約の繰り返しが横行するなど、派遣労働者の立場がかえって不安定になっているとの指摘があるためだ。

特定派遣廃止、許可制へ 「常時雇用」形骸化を解消 厚労省+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

となり、特定労働者派遣への規制に踏み切られたとなります。

 

今後のSI業界へのインパク

さて、ここからが本題です。

今回の特定労働者派遣規制がどのような影響をあたえるでしょうか。

 

いくつかの事例で考えたいです。

 

所謂ITゼネコンと呼ばれるような大手SIerを中心に一部のSIerでは、請負契約を主体とした受注を行っており、影響は限定的の想定です。

再請負の場合も、パートナー会社との契約を主に請負契約の厳格化で対処していたため、特定労働者派遣が利用できなくなった場合の影響は限定的となるとの想定です。

 

※これは、ウォーターフォール型開発の活用が主だった、ということの裏返しなんですけどね。。。

 

これに対し、完全に請負契約に切り替えきれなかったユーザ企業や再委託SIerでは、以下のいずれかの対策が求められることとなります。

  1. パートナー会社に特定労働者派遣から一般労働者派遣に切り替えてもらう
  2. 開発体制を請負契約主体に切り替える
  3. 派遣契約から準委託契約に変更する

 

1の場合の対策は、今回の厚生労働省が目的としている対応の模様です。この場合、許可制移行に対応するべく資本金の用意や事業所の整備など派遣元企業はそれなりの対応が必要となります。小規模の派遣元企業では対応できない企業も出てくるはずです。

 

2の場合の対策は、開発体制を請負契約に対応できるよう、派遣先企業側の社員の教育、意識改革が必要です。契約上はなんとか対応できたとしても、1~2年ぐらいは意図せぬ偽装派遣状態となる事例も出てくると思います。開発パワーの低下は避けられないでしょう。

 

3の場合の対策は、2と同様に準委託契約に対応できるよう、派遣先企業の社員の教育などが必要となります。また、準委託契約では委託元企業の開発リスクが増加することとなりますので、プロジェクト管理スキルのおぼつかないマネージャーの場合、システム開発での失敗が増加することとなります。

 

いずれにせよ、少なからぬ開発発力低下を招くことは必至です。

 

今年はデスマになる、なんてのんきに予想*2してましたが、来年もデスマがあちこちで頻発しそうですね。。。

 

これにより、システム投資を行うユーザ企業側の影響も発生することでしょう。

 

また、ITPro元記事では、

  1. 社会保障・税番号(マイナンバー制度)対応
  2. みずほ銀行の勘定系システムの構築プロジェクト

を事例としてあげてましたね。

1は大小様々な企業でシステム改修が発生します。この影響は広範囲に広がります。

似たような案件で、今年の消費税増税案件では、過去消費税率が変更となったことを受けてある程度消費税率変更を見越したシステムにしており、影響は限定的になるとも言われてます。

これに対して、マイナンバー制度対応では、消費税率変更のようなカンタンなパラメータ変更だけではなく、業務変更を伴う改修など、それなりに対応が必要となる案件がほぼすべての企業に影響がでると予想できます。

この対応負担は、ユーザ、SIer双方にかなりの負担として降り掛かってくると予想できます。

つまり、今回の特定労働者派遣規制に開発力が低下したことで、ひどい目にあう可能性が高いのでは、と考えてます。

 

これに対し、2は規模自体は大きいものの大手SIerを中心とした企業が受注するでしょうし、そういった意味では特定労働者派遣の影響は限定的かな、と考えてます。

※まあ、別の意味でひどい目にあうかもしれませんが。。。。

 

まとめ

ダラダラと雑感まとめてみましたが、前述のとおり、来年度は相当大変な年になりそうです。

今年のうちから派遣先、元企業の双方がきちんと対策をねる必要があるのは間違いないですね。

オッサンの会社では既に請負契約で対応するようにしていたので、影響は軽微な方となりますが。。。過去、偽装請負対策の時は結構混乱しながらの対応してましたので、今回モロに影響を受けた場合相当大変じゃあないかなって思います。

 

まあ、今年は今年で忙しくなるとオッサン予想してましたが、来年に向けての準備まで含めたらたまったもんじゃあないですね。。。

 

まあ、皆様体に気を付けて頑張りましょう!

 

 

以上