で、年金の強制徴収で誰を救い、誰を苦しめるのか?
国民年金滞納者、所得400万円以上で差し押さえ :日本経済新聞
13ヶ月の滞納って20万ちょいってとこだよね。そのために差し押さえのための職員を増員したら、費用ばっかりかかってむしろ赤字が広がりそうな気がする。。。
今日ちょっと気になったのは上記記事。
年金を滞納すると強制差し押さえと。。。まあ、所謂見せしめ効果によって納付率を向上させようという感じですね。
正直、今現在の年金問題は不信感が高まっており、払いたくなる気持ちも非常にわかりますが、かと言って払わないという不法はよろしくない。
ここは是々非々で考えるべきだと思います。
さて、まあ、払う払わないより気になったのは、今回の強制徴収自体が制度として採算がとれるのか、です。
差し押さえコストは採算とれる?
一般に、強制差し押さえとなった場合、以下の様な手続きが取られるようです。
※弁護士サイト「債権回収の弁護士費用−埼玉債権回収サポート−」からの受け売りですが。。。
- 債務者に連絡。支払督促
- 調停
- 仮差押命令
- 訴訟
- 差押命令
ほうほう。。。結構手続きが必要ですね
ほいで、費用はおいくらか、というと。。。ひいっ、40万円!
さすがに高すぎじゃあないかって他の弁護士さんのサイトを見てみましたが、
債権回収|あなたを守るお坊さん弁護士円城法律事務所 5万円+成功報酬
売掛金等の債権回収を依頼する場合の弁護士費用 約17万円
う~ん、やっぱりお高い。
まあ、弁護士さんへの依頼だし、こんなものかって気がしますが、それにしても高い!
年金の強制徴収の場合、どうやら業務の民間委託の一環で債権回収はサービサーに依頼するみたいですけど*1、実働2~3日の拘束が発生すると考えれば1件の徴収で4~5万円ぐらいのコストは掛かると見て良いでしょう。
強制徴収の場合でも金受給権は確保される
さて、通常の債権回収であれば、債権を差押などで徴収してしまえばメデタシメデタシ。
徴収額から手続きにかかったコストを差っ引いた差額が儲けとなります。
ところが、今回の場合は年金の強制徴収です。
強制徴収した場合の年金受給権ですが、当然有効となります。*2
なので、強制徴収した債権は、儲けではなく被強制徴収者(年金支払者)の年金債権となるわけですね。年金を強制徴収した結果、通常の支払いを行ったのと同じ扱いにし、将来的には年金受給として最終的には年金が支払われることとなります。
つまり、強制徴収にかかったコストの分だけ年金原資からの純粋な持ち出しってわけです。
延滞金が多少入りますが、仮に13ヶ月の未納でも、未納金は22万円程度。14.6%の延滞金でも3万円程度にしかなりません。
前述したコスト試算は単純なサービサー委託手数料を想定してますが、他にも対応するための公務員職員増加のための費用もかかります。事務経費もかかります。年金原資は相当損なわれるわけですね。
これってどうなんでしょう?
年金強制徴収は誰のための制度なのか
確かに、年金を支払わないのは不法です。
でも、強制徴収しなければ、未納者は年金受給権を失います。
つまり、強制徴収のコストも掛からず、将来の年金債権もなくなります。
正直、コストがかからず、年金債権が発生しない分マシとも言えます。
(まあ、その他生活保護などで別途支出が増える可能性がありますが。。。)
わざわざ強制徴収をかけた結果、コストは掛かり、しかも将来の年金債権は発生するわけです。
言うならば、今回の強制徴収は、現在の年金支払者に対する支払原資を徴収するため、将来の年金原資を毀損しているとも言えます。未納者は納付したことで、不信感は残るものの結局受給権という利得を得ることができます。結局、徴収コストがかかった分、将来世代への負担は増加するでしょう。
てか誰得?
仕事が一気に増えた公務員さんとサービサー特需ですか。そうですか。
まとめ
まあ、色々書きましたが今回の強制徴収は確かに示威効果もあり、年金徴収率を改善させることにつながるでしょう。
費用対効果で考えると正直微妙です。上記の通り結局は問題の先送りにしかならないと思います。ヘタしたら更に悪化する方向になる恐れもあります。
まあ、他に手がないってのもわかります。オッサンも素晴らしい解決案があるわけじゃあないですし。
ま、中途半端な対策で将来世代を苦しめることがないよう、抜本対策の速やかな導入に期待です。
以上