三菱UFJのエンタープライズアジャイル導入への期待と不安
News & Trend - 東京三菱UFJ銀がエンタープライズアジャイル導入、“攻めのIT活用”を実現:ITpro
銀行にしては珍しく思い切ったなと思いつつ、ほんとうに大丈夫なのかな。
偽装派遣やらかさない?
ウォーターフォール主体で開発を進めていた会社がやりがちなのが、スクラムなどの導入に伴い偽装請負をやらかしてしまうこと。
請負契約は、ウォーターフォール型開発に非常にマッチしている反面、スクラム等アジャイルとの相性はトコトン悪いわけなんですよね。
現状、ウォーターフォール主体で開発を進めていたってことは、おそらくベンダなどの委託先とは請負契約を結んでいることが想定されますが、この契約のままスクラムを初めたりしたら途端に偽装請負に引っかかる可能性があります。
ココらへんの管理統制はきちんととれているんだろうか。。。
紙の文化からの脱却はできている?
銀行ってわりかし紙の文化が残っていて、確か納品物に印刷した紙の設計書を要求することもしばしばだったりするのですのですね。
別に資料の電子化が進んでないってわけではなく、紙などの固定媒体で証跡を残しておかないと鬼の金融庁検査が入った場合に太刀打ち出来ないため。
※一昔前は押印なしの納品は受け付けないなんてザラでしたけど。
このような状況でアジャイルの様な反復型開発を始めたら、リリースの度にキングジム一冊~ダンボール数箱の納品書が送られてくるわけで。。。
アジャイル開発に備えて、実は新たに文書保管室を作りました、とか。。。
基幹系とつながっている部分ではリーン・ウォーターフォール?
アジャイル開発の対象としている部分には、
- 営業店支援
- インターネットバンキング
- 市場系システム
が上がっているわけですが、この内営業店支援やインターネットバンキングなどは基幹系システムと密接につながっている部分も多いシステムですね。
で、基幹系のシステムのデータに間違いが発生したりすると、金融庁から怒られてしまうわけで、対基幹系システム向けのシステム改修については、恐ろしくテストを要求されることもまあしばしあります。
てなわけで、この部位についてはリリースしてから品質を上げる、というタイプではなく、品質を十分に高めリリースする、と言った品質要求を受けがちな部分なんですよね。
という状況を加味すると、アジャイルと言ってもXPみたいな方面ではなく、リーン、スクラムとウォーターフォールを組み合わせたリーン・ウォーターフォール型*1の開発手法を採用しているんじゃないかなと思われます。
ただ、実際はそこまで上手く運用できずに、昔ながらの五月雨式ウォーターフォールをおためごまかし的に使う形になっちゃったりするんじゃあないかなと。
まあ、つまりはいつもどおりの開発スタイルに戻りました、みたいな感じで。
まとめ
まあ、何にせよ新しい試みを試そうという意気込みは良いかと思うんですけど、なんだかんだで失敗して「やっぱりアジャイルは駄目だ」なんてならなきゃいいよなって思います。
ウォーターフォールからアジャイルに切り替えようとして失敗してきたプロジェクト幾つか見ましたが、一度失敗してしまうと中々次のチャレンジを行おうって気概がなくなってしまったりするので。。。
とはいえ、ここで三菱UFJで成功事例作れば、他の金融機関も導入しようなんて気持ちも出てくることでしょうし、ぜひとも成功してほしいと思いますね。
気がかりなのは、開発スコープをきちんと制御できるキーマンがいるのかな。
導入したい要求を積み上げることはできても、どこまで開発するのか、開発スコープを制御するには一朝一夕で身に付けられる能力ではないかと思いますが。。。
逆に言えば、開発スコープをきちんと制御できるキーマンがいれば、なんとかなるんじゃないかな、と思います。
※つうか、それができないからトラブル訳で。。。
以上