IT技術者の視点で見たホワイトカラーエグゼンプション
しばらく前の記事ですけど、上記の記事の感想を書いておこうと思っていたのでした。
裁量労働制からどう変えるのか?
そもそも、システムエンジニア自体、既に裁量労働制の対象なわけで。
所定時間内在業代は36協定で労使合意がとれていれば出ない状態なわけでして。
正直ホワイトカラーエグゼンプション(以下WE)の対象にする必要ないんじゃないかな、と思っているのですが、どうやら労働政策審議会では思惑が違うようです。
一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外
労働政策審議会 (労働条件分科会) |厚生労働省 資料より抜粋
上記の記載内容を見るに、裁量労働制との違いは「所定労働時間外労働」の取り扱いの違いみたいですね。
現在の裁量労働制でも、深夜など、所定労働時間外の労働については残業代として割増賃金が支払われるんですけど、それがなくなる点が違いとなる模様です。
システムの仕事していると、夜間立会などざらにあるわけですけど、別に自分の意思で行っているわけではなく、お客の業務都合といった半強制的なモノがほとんどなわけで、ぶっちゃけ自己の裁量で進めるものじゃあ無いと思うんですよね。
殆どの場合会社都合なわけなので。
それを、自己の成果のための自由の働き方のために制限を無くすってのはちょっと違う気がするんだけどなあ。
IT技術者の適応範囲
ところで、元記事では「労働時間規制の除外、IT技術者も対象」なんて記載がありますが、労働政策審議会の資料を見るに、プログラマは適応除外になるんじゃないかな、なんて気がします。
(2) 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。
「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること。
厚生労働省基準では、「概要設計・要件定義」「外部設計・内部設計」「システム運用・保守」に該当する業務を担当するエンジニアは自己の裁量で仕事を行うことが出来ると判断してます。
そして、WEの検討資料を読んだ感じ、裁量労働制を改善しつつ、WEを導入するみたいな記載から推測するに、現在の裁量労働制対象職種から、年収基準が適合する職種が対称となるような形かな、との印象を受けました。
ざっとまとめると以下の表の様な感じかと。
WE | 裁量労働制 | 通常労働 | |
SE(年収1075万円以上) | 対象 | 対象 | 対象 |
SE(年収1075万円未満) | 対象外 | 対象 | 対象 |
プログラマ | 対象外 | 対象外 | 対象 |
ところで、昨年某社のブログだっけか、「SIerのプログラマは言われたままにプログラミングするだけで労働集約的。WEBプログラマなら自分でサービスを考えながら創造性を持ってプログラミングできる知識集約だ」とかって主張をさんざん見た記憶があります。*1
今までは裁量労働制でもなく、WEの対象とならなかったプログラマも、厚生労働省のあまりIT業界の労働実態に詳しくないお役人あたりが変に唆されて、「裁量を持って仕事が出来るんだし、WEや裁量労働制の対象にしてもいいよね」なんて変更されたりする可能性も0ではない、かも。
グレーゾーンで名ばかりSEで裁量労働制*2にしていたのが、大手を振って裁量労働制にできて経営層は大喜び、とか。
ま、そこまで変更にはならないか。
多分、現状通り対象外でしょうけどね。
そんなこと考えながらpaizaの求人見たら
勤務時間帯は基本的には固定されず出勤・退勤の時間は自由に決められる裁量労働制のIT/Webエンジニア、プログラマ求人情報です。
名目だけ、だよね。。。
まとめ
色々書いてみたものの、正直、既に裁量労働制なので、WEに変更したとして多分給料も変わらないだろうし、あまりメリットが見えないんだよなあ、って思います。
夜間立会の残業代も出なくなりそうだし。
裁量労働制からWEに変わったことでメリットを感じるIT技術者は、どんな人なのだろうか。。。
ぜひとも、モデルケースを見てみたいものです。
以上