プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

“納品のない受託開発”をプロマネのプロが見た雑感

“納品のない受託開発”とは何か?―ソニックガーデン代表 倉貫義人氏が全貌を語り尽くす。│CAREER HACK

 

IT業界ではそこそこのSIerプロマネやっているのですが、このインタビューを見て頭がクラっとしてしまった。。。

 

以下、雑感をだらだらと記述

  1. SIerでもアジャイルは普通に使うよ。てか、開発手法は道具なのでプロジェクト特性に合わせて選択するだけです。ウォーターフォール一辺倒のプロジェクトなどありえません。私がプロマネをやるときも、同一顧客に対して、ウォーターフォールアジャイルを2体制に分けて並行で運営するなど普通にあります。AWSなどクラウドも普通に使うしね。目的が達成できれば最小リスク、最小コストの手段を選ぶだけです。
  2. 業務システムでは、変わる業務と変わらない業務があるのよ。。。これを見極めるのがシステムアーキテクトの基本。で、変わらない業務に対してまずはシステム化を行うのが定石。そのほうが、維持保守コスト抑えられて投資効率が良い。頻繁に変更されるシステムにウォーターフォール開発を行うのは確かに効率的でないけど、めったに変更されないシステムにアジャイルアジャイルの良さを生かせなくてかえって無駄になることもある。
  3. また、変わらないシステム=基幹系だったりするわけで、これに対して変更を前提とするアジャイル手法で開発、ユーザリリースを行うとトラブルを誘発、訴訟問題となることもありえます。記事を見るにB2Cを念頭に置いている模様ですけど、B2Bシステムの割合もかなり高いことをお忘れなく。
  4. ちなみに、手戻りを最小に抑えられるだけの見極めができるスキルがあれば、ウォーターフォールのほうが開発コストが小さいです。当たり前だけど。それが出来ないからアジャイルだ!という声もありますが、ある程度スキルが有れば手戻り無しでリリースを行うなんてのはそんなに難しくないです。私がマネジメントしている案件で、お客さんの追加要望なしでリリースなんて当たり前、手戻りが発生すること自体が珍しい。
  5. ちなみに、「納品」自体はお客さんからのニーズにより発生していることも忘れてはダメです。設計書を納品するのも、モノを納品するのもベンダロックインを防ぐためだったりします。このソニックガーデン社の開発方式では、まず間違いなくベンダロックインが発生します。うまく行っているうちは良いのですけど、トラブルゴタゴタが発生した場合、お客さんは致命的なリスクを抱えることとなります。ベンダ契約規定などでリスク高と判断されてしまう可能性は高いです。
  6. 納品のある契約、いわゆる請負契約ってそもそもお客さんからしたら非常にわかりやすいのですよ。システムに値札を付けて、契約結んだらシステムを納品しろってわけだし。トラブルがあれば瑕疵担保責任としてベンダー側はなんとしても修理する。責任の明確さは重要です。
  7. そういや、昔こんな訴訟があったのを思い出しました(http://www.system-tr.jp/wiki/index.php?6.%20%E5%A5%91%E7%B4%84%E5%BD%A2%E6%85%8B%E3%81%8C%E8%AB%8B%E8%B2%A0%E3%81%8B%E6%BA%96%E5%A7%94%E4%BB%BB%E3%81%8B%E3%81%A7%E3%80%81%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E4%BA%8B%E4%BE%8B)。納品が必要な請負契約ではなく、役務の提供として準委任契約としたものの、トラブルが発生し訴訟となった事例。準委任契約と請負契約のお客さんとの結び方はいつも気を使います。

 

まあ、色々書きましたがプロマネやった経験上、プロジェクトを解決する「銀の弾丸」なんて存在しないです。常に、最適な回答を見つけ出すことが求められます。そこには、アジャイルウォーターフォールもなく、その場その場で違うわけです。アジャイル一辺倒で解決できるほど、システム開発は甘くないと思ってます。

 

アジャイルは果たして「銀の弾丸」となるのかな

 

 

以上