業界批判を正しく行うためには正しい資料の分析から
IT業界の『多重下請け構造』は社会悪になりつつある - paiza開発日誌
多重請負がないとされるアメリカで、流動性の高いITエンジニアの大量解雇が社会問題となり、大統領選挙の論点までなったことを知った上での意見かな?
色々突っ込みドコロがあるものの、細かくツッコむとITproの「極言暴論」への指摘とおんなじとなり、ワンパターンになってしまうので、こちらの記事オリジナルで間違っている部分を指摘。
※というか、SIerの問題点が「極言暴論」と同じなので、多分参考にしているんじゃあないだろうか。。。あの暴論をエンジニアがうのみにするのはいかがなものかと思うのですが。。。
資料はきちんと読もう
一方で経済産業省発表の「情報サービス産業の現状」によると、Webビジネス市場は2011年の11兆円から20年の47兆円まで、約4.5倍に拡大すると予測されており、Webエンジニアの人材不足は今後も加速していく事が予測されるため、そうそうに転向してしまったほうが良いかもしれません。
上記内容は、おそらく以下の資料を参考に書かれたものでしょう。
情報サービス産業の現状
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/jouhoukeizai/jinzai/001_s01_00.pdf
でもね、資料の読み方が根本的に間違っている。。。
上記市場には「拡張領域」、つまり従来型企業がウェブビジネスに拡張したビジネス規模も含まれてるんですね。
例えば、小売業のネット進出であるセブンネットショッピングなども含まれており、元記事で指すWEBエンジニア企業の対象範囲は、上記の資料中のウェブネイティブ企業の領域です。2010時点では34.2%だったシェアが、43.5%へ伸びた、ということがポイント。
残り、65.8%は既存ビジネスの延長であり、SIerで構築する部分も大きい。うちでもやっているし。
つまり、元資料をきちんと読むと、ここで語りたいことは「ウェブ企業の成長は、従来のITサービス業を凌駕するほど伸びる」ということではなく「ウェブビジネスにおいて、ウェブネイティブ企業のシェアが2割増し」ぐらいに読むのが正解です。
ま、ウェブビジネスの専業であるウェブネイティブ企業が、SIerよりも伸びが小さいんであれば存在意義を問われると思うのですが。。。
上記資料より、ウェブビジネスの伸びは大きく、ウェブネイティブ企業が16兆円相当、従来型企業が20兆円相当の伸びを示しております。率ベースではウェブネイティブ企業の増加が多い反面、額ベースでは従来よりSIerの担当する部分はウェブネイティブ企業以上に十分成長している、結果としてSIerでもエンジニア需要が高まると読むのが自然かと思うのですが。。。
同じ理由で
それと同時に、今後ITが企業戦略の中でなくてはならい中心的役割を果たすようになっていくと、ユーザー企業内でも少なくとも元請けぐらいの能力の内製化が進むと考えられます。この流れによりSIのニーズは徐々に減っていくと考えられます。
コレも。
上記の経産省の資料でも似たような記載がありますが、元資料ではITサービス業の市場成長率を「3.0%」とよんでいるんですよね。
ガートナーなどの資料を読むとわかるのですけど、アメリカや欧州諸国、日本ではITO(ITアウトソーシング)、BPO(業務アウトソーシング)の伸びが活発です。そういった影響もあり、実際のところ市場は拡張傾向を示してます。
SIerの仕事がSI=受託開発だけなら減少するかもしれませんが、SIerとしての仕事は拡大方向になるのが実情。
そこら辺の情報はきちんと抑えたほうが良いかと思います。
まとめ
以前、paiza記事への反論*1を書いた時も思ったのですが。。。
ちょっと、資料の参照の仕方として都合の良い部分だけを抜き出して書き過ぎじゃあないかな、と思うんですよね。
「情報サービス産業の現状」の引用もそう。自説に沿った「ウェブビジネスの拡大」は引用するものの、「ITサービス業の市場成長」については引用しないとか。
業界を変えたい、と思うなら、まずは正しい分析が行えなきゃいけないと思います。
そういった意味でも、自分の意見だけに固執するのではなく、客観的な資料の見方が必要じゃないかな。
恣意的な資料の取捨選択は、自説の信ぴょう性を損なうだけじゃあないかなと思いますよ。
以上
- 作者: 独立行政法人情報処理推進機構,IT人材白書2014の表紙
- 出版社/メーカー: 独立行政法人 情報処理推進機構
- 発売日: 2014/04/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る