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プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

イケてる環境のWEB系の労働生産性がイケてないSIerのたった三割しかない件

世の中

久しぶりの更新。一度ブログ書くの面倒になると、とことん書くのが面倒になるもんで。

 

【Web系最高って言うけど本当なの?】SIから転職したエンジニア達に聞いてみた - paiza開発日誌

 

まあ、いつものPaizaのWebアゲSIer Disの記事なわけなんですが。。。

最近、どうでもよくなって放置していたものの、いろいろ誤認している人が増えていそうなので、改めて問題点指摘しておきますか。ブコメ見るとSIer側の反論も欲しそうだし。

 とはいえ、開発環境の話はわきに置いて、別の観点を中心とした内容となります。

 

イケてる環境のWEB系の労働生産性は、イケてないSIerのたった三割

 

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/ict_keizai_h28.pdf

 

上記は総務省が毎年公開している「ICT の経済分析に関する調査 」の資料です。

大体10年前からIT業界の動向などが分析されている資料で、業界動向にかかわる人間なら一読しておいたほうが良い資料だったりします。

で、この資料ってずいぶん昔から公開されているので、みんな知っているものかと思いきやPaizaの記事やブコメ見るに案外知られてないような気がしてます。

 

このPDFは平成27年度版。現時点の最新版です。

P.64を参照してもらえると、IT業界内の各業種ごとの労働生産性が記載されてます。

ITにかかわるすべての業種の労働生産性が記載されており、見づらいので、SIer(便宜上情報サービス業*1)とWEB系(インターネット付随サービス業)を抽出したグラフを作成するとこんな感じとなります。

 

 

f:id:getlife:20161022023845p:plain

まあ、見ての通りなんですが、WEB系業種の労働生産性は2007年をピークに下がり続け、現時点では293万円となりIT業界で最低、半面、SIer労働生産性リーマンショックの影響を受けてピークを打ち、現在は992万円

アジャイルを使い、GitHubを使い、各種ツールを使い内製をしてるWEB系は、ウォータフォールを使い、SVNを使い、Excel方眼紙で多重請負構造のSIerと比べ、労働生産性がたった3割しかない状態です。

労働生産性の全業種・IT業界全体への寄与度では直近マイナスをキープし続けている状態。いわば、日本の労働生産性の足を引っ張っている状態です。

 

よく、Paizaなんかでは「Web業界は知的集約産業。SIer労働集約産業」なんて言ってたりします。この知的集約産業ってのは、「高い知的生産を持って、労働力を用いた労働集約的な側面も持ちつつも高い労働生産性を持つ産業」なんて言われたりするわけで、労働生産性は「労働サービス産業<知的集約産業」という関係性を持つことがあります。

SIerは全産業平均よりも高く、知的集約産業の面目を保っているわけですが、WEB系は労働生産性を見ればほぼ労働集約産業といった水準。小売業(349万円)以下、飲食業(262万円)や医療・福祉・介護業(291万円)と同等水準。屋台で焼きそば焼いていたりするのと生産性に大差ない。

 

なぜWEB系は生産性が低いのか

はてなのテクノロジーカテゴリみていると、このPaizaを筆頭にWEB上げ、SIer DISの記事やブコメばかりで、まっとうなWEB系の生産性の低さを分析・問題視している記事を見た記憶がありません(見落としているだけかもしれないけど)。

WEB系の外部から見たなんとなくの風景です。憶測なので、ここはぜひともWEB系の人からの分析・意見がほしいなあ。

 

せっかく、前述のとおりWEB系は開発環境がイケているそうなので、そこからざっくり考えると

  • 「イケてる」WEB系の開発環境がほんとはイケてない(生産性を下げている)
  • 開発環境はイケているけど、それに余りあるほどウェブエンジニアの能力が低い
  • そもそも、業界自体のビジネスがイケてない

ってのが予想されます。

 

ただ、よく考えてみると、開発環境についてはたまに「かえって生産性下げているよな、それ」みたいなものを見かけることがあるものの、SIerとくらべ著しく労働生産性を下げる要因には見えない。

ウェブエンジニアの能力についても、従業員教育に金渋っているな~って見える場面がしばしばあるものの、SIerから転職した人間もいるし、著しく労働生産性を下げる要因には見えない。

となれば、業界自体がイケてないんじゃないだろうか、と予測できる。

 

 ざっくりとだけ言う*2と、WEB系はプログラムを作成する開発生産性が高いものの、ユーザが金を払ってでも使いたいと思わせるような付加価値の高いプロダクトが作れてないのが原因じゃないのかなって気がしてます。開発生産性ばかり高めることに目を向けるあまり、過剰生産となり、例えばあるヒットサービスが出たら雨後の筍のように類似サービスが出現するなど、顧客を食い合って互いに付加価値を削りあっているレッドオーシャンに見えたり(いわばウェブサービスのデフレ状態)。

 

結局のところ、業界をマクロでみてみれば

SIerのプロダクトは、ユーザが高い金を払ってでも欲しがる故にどんくさい」

「WEB系のプロダクトは、無駄なく・素早く・大量故に付加価値は限りなく低い」

っていう対比関係にあり、プロダクト特性をあまり理解せず開発生産性の一点だけを持ってSIerはイケてないって言っているような気がします。

高い付加価値を得るために、法、契約、資産効率などの理由からあえて今現在の開発スタイルをとっている部分を「非効率」といったりとか。

 

「日本のエンジニアの地位を上げるというサービスとしての目的」

 元記事では、「日本のエンジニアの地位を上げるというサービスとしての目的」なんて記載しているわけだけど。。。

 

でも、イケてないSIerの特定企業をあたかも業界全体みたいな感じで適当にDisって、一部の事例でWEB業界がイケているようにごまかし、労働生産性が著しく低いWEB業界で優秀なIT技術者を使いつぶそうとするのって、本気で「日本のエンジニアの地位を上げる」って考えているのだろうか。

よその業界をDisって悦に入っている暇があるなら、まずは、WEB業界の労働生産性の低さに向き合って、きちんと知的集約産業として誇れる水準に持っていけるよう、ユーザへの付加価値を高めることを努力することじゃあないのだろうか。

 

もちろん、イノベーションを達成するためには、投資として一時的に労働生産性が低い時期があっても仕方ない。ただ、それがもう10年近く続けば、そろそろイノベーションのための投資とも言ってられない状況。

現在は、アベノミクスなどの金融政策もあり、資金余りがWEB業界に集まっていると思います。なので、労働生産性が低いにもかかわらず、飲食業などと比べればそこそこ良い待遇となっていると思います(確か、平均だとSIerの3割減ぐらいだったはず)。サービス業の労働分配率が50%程度といわれることから、SIerが大体妥当な給与水準で、WEB系は相当高い下駄をはいた状態と認識しております。

言い換えれば、イノベーションがいつまでも生み出せないと判断され投資意欲が落ちたり、金融政策が緊縮に転換したりして資金流入が滞れば、たちまち待遇が激減する恐れだってあるわけで。

 

それが表れたのが、過去のITバブル。米国のインターネット業界が、過剰生産、過剰投資となった挙句、利上げを契機に過剰な期待がしぼみ一気に不況となったのが、2000年代前半の話。

現在の米国IT業界もバブルの再来で過剰投資では、という声はしばらく前からちらほら聞こえてきているものの、利益や付加価値は依然と上昇しており、投資に見合った成長を続けているという声もあり、バブルではないという反論も聞こえる感じ。

 

翻って日本は?

上場ゴールみたいな期待ばかり先行し実力が伴わないウェブ企業が頻出してないだろうか?

開発技術を追うばかりで生産過剰となって互いの首を絞めてないか?自らの首を絞めてないか?

過剰投資とならないよう、自転車操業的な売り上げの拡大だけでなく、利益・付加価値額を成長させているだろうか?

ITバブル越えの日経平均株価となった現在、バブルの芽は発芽してないだろうか?

 

まとめ

 しばらく前、たまたまだけど新卒でとあるWEB系企業に就職した女性の話を耳にする機会がありました。

深夜遅くまでの長時間労働、頻繁な休日出勤、ろくな研修もせず半強制的な時間外勉強会。。。SIerでも激務と呼ばれる会社で働いたおっさんでもさすがにドン引きする水準の労働環境で、ぼろぼろとなった見た目から相当疲弊しているのは明らか。

でも、その女性曰くその会社では「SIerよりもうちのほうがマシ」なんて言い訳をしている。

傍から見たら何を寝言をといったレベルでも、当事者の女の子からしたらそんなことはわからない。

 

その女性の姿が、ちょうどこの前の電通の過労自死問題で亡くなってしまった女性のTwitterで記された姿に重なってしまい、ついこんな記事を書いてしまった。。。

WEB系の中の人でないおっさんが書いたところで正確性を欠くし、人によってはDISりにしか聞こえないと思うし。。。あまりよくないのはわかってはいるものの、書かずにはいられなかった。

彼女は大丈夫だろうか。。。。

 

 

前述のグラフのように、SIerの職場は労働生産性は20年前の1.5倍に上昇したし、残業の扱いも厳しくなって総労働時間もぐっと減った。でも、まだまだ改善の余地はある。腐ってる企業もまだまだ多いし、Disりたくなる気持ちもわからなくはない。

 

だからと言って、WEB系の環境が最高か?ってのははなはだ疑問。

というか、ブコメなんかでもちらほら見かけるけど、他業種をDisることで自業種を相対的にアゲようとしている言説が当たり前のようにネットに流れている時点で、その業界ってまともなの?って思える。

 

繰り返しになりますが、前述のようなWEB業界の状況も鑑みずに能天気にWEB上げ、SIer Disを繰り返しているPaizaは本気で「日本のエンジニアの地位を上げる」って考えているのだろうか。

 

本気でエンジニアの地位を上げることを考えているのであれば、先述の女性のような労務状況を改善できるよう、米国のようにエンジニアがバブルの露と消えないよう、まず自分らの足元をきちんと見てほしい、と切に感じるわけです。

 

以上

 

バブルの歴史

バブルの歴史

 

 

*1:情報サービス業は、厳密には組み込みソフトウェアや受託WEB開発業なんかも含まれますが、SIer単独な労働生産性が記載されておらず、人数比率もSIer大きいので、とりあえずSIerとしておきます

*2:細かく言うといくらでも思いつくけど、Disにしかならないのと時間に限りがあるので割愛

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