単純な業務標準化礼賛は失敗のもと
この手の記事でERPを礼賛されているのを見ると、ちょっと違和感を感じるんですよね。。。
オッサンは受託だけでなく、Saasのサービス作ったり、パッケージ作ってたりもしてます。作る側の観点から違和感をちょっとまとめます。
国が違えば法・習慣も違う
業務の標準化が完了している欧米企業なら、買収対象の企業の業務プロセスもシステムも自分たちの仕組みに片寄せする。繰り返すが、どちらがベストプラクティスかよりも、標準化が重要だからだ。
パッケージでよく行われるカスタマイズとして
- 国カスタマイズ
- 業種カスタマイズ
- 個社カスタマイズ
なんてのがあります。
一番問題となるのが「国カスタマイズ」。国によって言語はもちろん、法律、取引習慣等の慣習が違うことはよくあることです。パッケージは、往々にしてベースとなる業務スタイルを持ってますが、パッケージを開発した国の習慣を基準にすることが多いです。
このため、元記事にあるように欧米企業が日本企業を買収したとして、欧米のパッケージを使った業務システムを、何も考えずに欧米側に合わせた場合、極端に業務効率が低下することがあります。
結局のところ、従業員が取引先との商習慣と業務システムとの間でギャップ吸収に疲弊し、業務が回らないなんてのもよくあります。日本と欧米との法律や商習慣などの違いを従業員が吸収するわけですが。。。当たり前ですが、大きな業務負担となり効率が低下するわけです。
その結果、結局大量のカスタマイズを行うハメになり、「グローバルのための業務の標準化」の掛け声は脆くも崩れ去るなんてのもよくある話です。
大企業はパッケージを導入しないのは、怠慢だから?
また、同じような言説で「中小企業ではパッケージを導入して標準化しているのに、大企業では導入してない。大企業は怠慢だ」みたいな言説を聞いたりもします。
これは、大企業と中小企業の業務範囲の違いが大きいです。
例えば、大企業では業務システムを利用するグループ単位で見れば、「製造」「販売」「与信」「在庫保管」「運送」と言った幅広い業務を取り扱ってたりします。
これに対し、中小企業では業務領域が「製造」だけだったり、「販売」だけだったりすることもよくあります。このような狭い業務領域ならパッケージに合わせての標準化も比較的カンタンです。
大企業のような業務領域の広い業態をサポートするERPはまずありません。このため、複数のパッケージやSaasを導入し、それらの間をカスタマイズでつなげたりするのですが、結局カスタマイズ量が膨大となってしまい費用がかさんだりすることもよくある話。
現在のスクラッチで構築したシステムをメンテナンスするほうが、よっぽど安くて効率的なんてのもわりかし見かける光景ですね。
グローバル標準化というユートピア
そういった現状を考慮すれば、元記事に見られるパッケージ観はちょっと表層的です。
欧米企業の場合、これまで見てきたように基幹系のほうの始末はERP導入などで済んでおり、それを前提に新しい儲けるためのシステムを構築することができる。それに対して日本企業はレガシーシステムのままであろうとERPを導入していようと、基幹系システムを見直す必要がある。つまり、基幹系システムの見直しと同時に、儲けるシステムを構築し基幹系との連携を図るという二正面作戦を強いられることになるわけだ。
グローバル標準化はできれば理想的です。ただ、それを実現するためには国や人と言ったハードルがあまりにも高い。一種のユートピアです。
シンプルにグローバル標準化で基幹システムを対応できるのは、ほんの一握りって気がします。上手く言ったらラッキーぐらいかも。
基幹システムをグローバル標準化に向けて見なおせなんていう安易な発想ではなく、グローバル標準化された共通部と国と国とのギャップを埋めるカスタマイズ部を上手く使いこなすシステムのグローカル化の方が、よりグローバルな世界に対応できるんじゃないかなって思ってます。
まとめ
結局のところ、システムを利用するのは人間です。
なので、人間を無視したシステム導入は現実としてどこかで軋轢を生むと思ってます。
そういった意味では、パッケージの導入に必要なのは選択と集中かと。
多少人的コストが増加しても良いが、ITコストを削減したい部位にパッケージを適応し、人の業務効率が最大の目標みたいな部分でカスタマイズを行う、と言ったメリハリのあるシステム導入を行うと、システム導入成功率が高いと思います。
ま、結局のところ経営者が業務システムを含めて経営をどうしたいのか、と言った経営課題を理解する必要があるといった点で元記事と同じ結論になってしまうんですけどね。
以上