SIerとクラウドのエコシステムを描いてみる
ふむ。もしかしてSIerとクラウドベンダってかなり密接な関係を持っているけど、意外と知られてないのかな、と思いました。
ちょっとSIerを取り巻くエコシステムについて、まとめてみようかと思います。
※ココらへん会社などによってかなり方言がある場合があり、用語が異なるかもしれませんが、ご了承ください。
従来のSIエコシステム
大まかなSIerのエコシステムを図示すると、上記図のような関係があります。
ソリューションプロバイダー
ユーザに対して「ソリューション」を提供します。
要は、業務改善のための業務フロー設計を行ったり、SOAなど考え方を用いて概要アーキテクトレベルの設計を行ったり、パッケージやハードウェアの選定を行ったりするなど、システム全体の設計を行います。プロジェクト取りまとめとしてマネジメントなどを行う場合も。往々にして、元請けと呼ばれる会社ですね。
情報子会社や、大手SIerが担当することもあります。
ソフトウェアハウス
スクラッチでアプリを作成します。パッケージベンダやサービスプロバイダでは提供できない機能があった場合は、スクラッチでサービスを開発したりしますが、パッケージやサービスプロバイダ間のつなぐソフトウェアを開発したりします。
ソリューションプロバイダがサービス単位などに要件を切り分け、他のSIerが再委託として請負ったりもします
パッケージベンダ
RDBMSなどのミドルウェアやERPなどの業務パッケージといった既成システム、ソフトウェアを販売します。
神託をくれる会社などが有名ですね。
サービスプロバイダ
特定のサービスAPIを提供する会社です。企業間取引のベースを取り持ったり、銀行入出金などのサービスを提供していたりします。
全銀システムなどイメージしてもらうと良いかと。
ハードウェアベンダ
サーバやスイッチ、ロードバランサ等販売している会社です。機器設置などの導入までサポートするサービスを提供してたりもします。
日本国内なら、F・N・H・Iなどが有名ですね。
ネットワークベンダ
専用線などの通信ネットワークサービスを提供している会社です。キャリアと呼ばれたりもします。
日本国内なら、N・K・Sあたりがサービスを提供してます。
ハウジングサービス
データセンターなどの機器設置サービスを提供する会社です。自社のサーバルームで手におえないような規模でお世話になります。
ハードウェアベンダなどが自前で持っていてサービス提供する他、専業でやっている会社もあります。
クラウドと競合するインフラ系
さて、上記のようなエコシステムでSIerの仕事は成り立っているわけですが、クラウドとの競合関係を見てみます。
AWSなど、Iaasは「ハードウェアベンダ」「ホスティングサービス」「ネットワークベンダ」とバッチリ競合します。これらのサービスを提供してる場合、クラウドにより仕事を奪われる可能性があります。これに対抗するため、独自のパブリッククラウドサービスや、プライベートクラウドなどを構築し、サービスを提供している場合もあります。
ただ、実際のところ金融業の基幹システムなど、金融庁などの監督庁からの監査指摘などを恐れてオンプレミスで構築する例も根強く残っており、むしろクラウドベンダと協業して、ハイブリッドインフラを構築するなど、新たな価値を提供しつつあります。
Saas/Paasは、Iaasと同じく「ハードウェアベンダ」「ホスティングサービス」「ネットワークベンダ」と競合するのに加えて、「パッケージベンダ」や「サービスプロバイダ」とも競合する場合があります。
これに対抗するため、パッケージベンダが自社の製品をIaas上で構築、インターネットを通じて提供するなど、Saas化により対抗する場面も目立ちます。競合しつつも、サービスを利用する協業関係にあったりもするわけです。
一方、ソリューションプロバイダは全く競合関係がないどころか、選択肢が増えることになるので新たな協業先として協力体制を築いたりします。クラウドの存在は大歓迎だったりも。
クラウドで提供されるサービスやパッケージが増えると、それをつなぐためのカスタマイズは必ず必要となってきます。そういったスキマを埋めるためのソフトウェアハウスの需要は残り続けますが、もともとパッケージ等に仕事を奪われる部分があるため、トントンといった感じでしょう。
このような形で、クラウドの登場により、新たな競合と協業が増加します。
ざっくりとまとめると、以下の様な図の形になるかなと思います
営業効率の面も
上記では、従来のSIerとクラウドベンダが提供するサービスの差異に着目ましたが、他にも営業戦略といった面も考えられます。
SIerではシステム構築に対応するため、インフラ需要のボリュームが多いです。
このため、非インフラ系のSIerと手を組むことは、サポートや技術導入のためのコストを抑えつつ、多量のサービス需要を稼ぐ事ができます。
こういった、効率的な営業のためにも、多数の需要を持つSIerの存在が欠かせないってことですね。
まとめ
SIerとクラウドベンダとの間のエコシステムについて、いろいろ語ってみましたが、要はSI各社が提供するサービスの種類により、競合したり協業したりとはっきりと分かれる感じですね。
オッサンはソリューションプロバイダを中心にサービスを展開しているので、クラウドベンダとは協業関係にあります。なので、
クラウド時代を迎えたシステムインテグレータはどうなるのか。ここからその答えを明確に読み取ることができます。つまり、システムインテグレータはなくなるどころかクラウドを取り巻くエコシステムとして重要な役割に位置づけられているのです。
なんていう元記事の記述は、当然でしょって感じです。
とは言え、日本のSIer語るときメーカ系SIerであるF・N・Hを中心に語られることがあるので、「SIerのクラウド脅威」みたいな話が出てきたりするんでしょう。。。
まあ、協業だろうが、競合だろうが、クラウドは今後無視できなくなるのは確かだと思います。何にせよ、うまく折り合いをつけるための戦略は必要でしょうね。
以上