プロマネブログ

とあるSIerでプロマネやっているオッサンです。主にシステム開発ネタや仕事ネタ、気になった三面記事ネタの解説なんかしてたりします。

恐怖のPM募集要項にダメ出しする


国内銀行勘定系システム再構築プロジェクト全体PM募集 PM/PMOの案件ご紹介 | 【BIG DATA NAVI-ビッグデータナビ】 |

 

ネタだと思いたいんですけどねえ。一応求人として問い合わせ先もあるってことはマジなのだろうか。

 

ただのネタと信じたいのだけど。。。

 

必要スキルの日本語が怪しく、実際のとこのニーズがよくわからないのですが、グッと意訳して「大手ベンダに過去所属し、多数のパートナーベンダの関わる高難易度プロジェクト(1万MM以上くらい?)の案件で火消しPMとしての遂行経験がある人、ユーザ企業側PMとして募集」ぐらいの意味かなあ。

 

それなりにマッチングしているけど、関わりたくない。。。

 

まあ、とりあえずダメ出ししておきます。

 

ダメな点1 : 業務内容があいまい

クライアント側PMは良いとして、どのくらいの権限がもらえるのだろうか?火消しを行うのであれば、極端な話要件の切り捨て、次プロジェクトへの申し送りなど、かなりの利害調整が必要となります。

 

再構築プロジェクトだと、「あまり業務上重要じゃないけど、役員が肝いりで導入した機能」みたいなものもバッサリと切り捨てなければならないんですけど、こういうのに限って社内政治で身動きできなくなったり。

 

なので、通常はユーザ企業のそれなりに権限がある人が担当しないとまとまらないんですよね。

 

契約社員契約と書いてあるあたり、おそらく権限なんか与えられないんだろうな。。。粛々とプロジェクト遂行しろって追い詰められる状況が想像できて仕方ないです。

 

ダメな点2 : 銀行業界経験がBetter → Mustにしたほうが

ダメな点1に通じるのですが、火消し案件だと案件を切り捨てる判断が必要ですが、業務知識に通じてないと、要否判断がまともに出来ないこともしばしば。

やむを得ず削った機能が、実はその後業務の根幹に関わる機能だったりすると目も当てられません。

 

業務知識がBetterって書いてありますが、ただプロジェクトを遂行すれば良いのだろうか。それで賄えないから今回募集したのじゃないのかな。

 

ダメな点3 : 単価安すぎ

ざっくりと内容見るに、PMとしてのスキルとして高レベルの人材を求めてそうですけど、上限130万の単価は安すぎでしょう。

 

SIerではなく、フリーランス向けの求人だから、通常の単価より格安でも問題無いと判断したのだろうか。。。

 

まあ、ウチなんかもユーザ企業のPM支援なんて仕事もやってますが、今回みたいな高リスク案件なら3倍以上の単価で請求するんじゃないだろうかなあ。手を出したらやけどすることが目に見えているし。

 

上限単価130万円/月の案件だと、優秀なPMだと他にもっと割がよい案件へアサインされてしまうんじゃないかな。

 

まとめ

ブコメ見ると、某メガバン案件じゃないかと噂されてますが、昨年は他にもシステム更改案件はいくつかあったもようなので、もしかしたら違うかもな、なんては思います。

 

とはいえ、この求人。どこの会社の案件だろうがきな臭い匂いしかしません。

 

大規模炎上案件を経験したことありますけど、どんなにタフなメンタルがあっても、肉体的にはボロボロになるからなあ。

 

願わくば、現場のエンジニアが健康でありますように。。。

 

以上

 

 

システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓

システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓

 

 

 

2015年のITベンダ業界の展望予想

正月はずっと寝正月で惰眠にふけっていたのですが、いよいよ仕事始めを迎えるに当たり、今年の抱負も兼ねて業界展望の予想を行ってみようかと思います。

 

やっぱり2015年問題は起きない

改めて書くのもアレなんですが、一部のメディア*1で語られている2015年問題は発生しないと予想してます。

 

よく事例で引き出されるみずほ銀行プロジェクト。20万MMの壮大なプロジェクトとして語られてます。でも、そもそも20万MMは業界全体にインパクトを与えるほど巨大なのか、をきちんと考えるべきでしょう。

 

現時点、日本のIT技術者はベンダだけでも多よそ80万人。オフショア加えれば100万人程度の技術者が仕事しているわけで、年間の工数で考えれば1200万MMとなります。

 

みずほ銀行のプロジェクトも、単年で見れば10万MM程度でしかなく、業界全体の0.8%程度です。

上記の記事で紹介されている大型案件と呼ばれる案件を全て足しあわせても2%程度。

ただ、消費税増税の影響は思ったよりも深刻でシステム投資意欲減衰につながっている部分もあるので、システム開発が破綻するほど投資は伸びないのじゃないかな。

 

まあ、ガートナーあたりが予想する業界成長幅ぐらいの数値となるとの推測で、過去の実績を考えてみても、「忙しいけどまあ何とか頑張れる」といった例年通りの姿になるんじゃないかなと考えられます。

 

良いのか悪いのかは別として。

 

2015年問題と名前がつけられるぐらい活況なら、まあそれはそれで嬉しい訳ですがそこまで期待できなさそうな感じかなあ。

 

BPOが新たなトレンドに入るかも

IT業界のビジネストレンドにBPOが追加される機運が高まるのでは、と考えてます。

 

よくIT業界は人手不足が叫ばれているのですけど、他所の業界を見るに、目にする企業のほとんどが人手不足だったりして、IT業界ほど要員管理していないせいで表層化してないだけじゃないの、というのを昨年さんざん見かけました。

 

※要は、従業員が恒常的な長時間労働などの負荷が高い状態に置かれていることでなんとか解決できている状態。

 

このような状況下では、ITによる業務効率化もさながら、そもそもの業務の外部化についても検討が広がることから、自社でのIT投資ではなく共同の業務センターでの集約的なIT投資による業務委託みたいなスタイルが拡大するんじゃないかと。

 

IT運用の外注化自体は、日本だけじゃなく世界的にもかなりの成長分野です。

実はこの手のビジネスはアメリカなんかだとよくある形態で、ITベンダがユーザ企業の情報子会社やIT部門をIT資産ごと買収し、共同出資子会社がBPOを行うみたいなスタイルですね。

 

現在はコールセンターなんかがよくある事例ですけど、他の業務領域でも更に拡大するんじゃないかな。

 

てなわけで、IT子会社およびIT部門の買収やIT業務代行会社の共同出資による設立などが度々ニュースをにぎわすんじゃないかな、なんて予想してます。

 

セキュリティはより一層うるさくなる

まあ、ベネッセの一件のせいですけど、セキュリティはよりうるさくなるんじゃないかな、と予想してます。

 

現在はただの自主規制の範疇で重石を載せられた状況ですけど、今年はそれが具体的な制約が仕事の場に影響してくるんじゃないかなって予想してます。

 

例えば、具体的な開発要件のセキュリティ要件として、監査項目として、運用要件として。

多分、プライバシーマークなどの制度関連にも何らかの影響が出るんじゃないかな~。

 

まあ、性懲りもなく仏作って魂入れずになりそうな気もしますが。

 

まとめ

当たるも八卦当たらぬも八卦と言った感じの適当な予想ではありますが、今年もほどほどの忙しさで生きていけるよう、頑張って行きたいとの所存です。

 

 

以上

2014年年初の業界動向予想の振り返り



自分の予想に対しての振り返りを行ってみようかと。

 

消費税増税の影響は想像より大きかった

  • 大手SIerではデスマの災禍に見舞われる
  • 中小SIerでは大手の競争激化に巻き込まれデスマが拡大する

 

2013年からの傾向から、2014年は死ぬほど忙しいんじゃないかと予想していたのですが、実際のところ「そこそこ」忙しいって感じで幕を閉じそうです。

 

原因は、消費税増税かな。

 

想定より景気への影響が悪いと感じたB2Cのユーザ企業は、今後の景気の行き先で不安を感じたため投資意欲が一気にブレーキが掛かった。その煽りを受けて、SIerに依頼される投資案件がぐっと絞られた感触があります。

なので、現在の開発パワーでは破綻するんじゃないの?と予想していた感も若干あったのですが、実際はトントンといった感じでデスマが多発するような事態とはならなかった感じですね。

 

 ※とはいえ、ユーザ企業の種類によっては消費税に対する受け取り方違うので、別のユーザ企業を相手にしているところだと忙しさは変わらなさそうな気がします。公共系を相手にしているところとか。

 

外注化は相変わらずだけど、当初予想と違っていた

  • 企業内製化は後退する

 

元々の予想は「IT部門の開発案件が外注化される」を予想していましたが、実際のところはちょっと毛色が違っていた認識です。

 

元々は、IT投資拡大にともなって不足する内部リソース問題を解消するべく外注が増加する、といった予想でしたが、

  • そもそも、IT資産を持たずにBPOを活用する様に転換(そもそも、IT投資という概念から脱却)
  • 全て内製だったシステム構築から、クラウドによるインフラ構築などをSIerに依頼(SIerの技術買パターン)

といった非開発リソース系の外注パターンが散見されました。

 

BPOの拡大は、人手不足の結果、そもそもシステム投資を行っても使う人間自体が不足していることの現れかもしれないです。現在の人手不足はしばらく継続するでしょうし、BPO方向の外注は更に拡大となるかもしれないかなあ。

 

クラウドプライベートクラウドが強かった

  • IaasやSaasなど、クラウドの利用は引き続き進展の反面、メーカ系SIerも機器販売に一息

 

今年はクラウド導入案件が多かったですね。概ね予想は当たりでした。

ウチの導入事例がはてなホッテントリに上がってたりしてましたが、単にコスト削減といった実益だけでなく、宣伝効果として先進性をアピールといった副次効果や先を見据えてのIT資産ポートフォリオの種類拡大のためなど、部分部分でクラウドを利用する場面が増えてきた感じがします。

 

ところで、クラウドというとAWSみたいな「パブリッククラウド」が注目されがちですが、現場から見ると実際にはプライベートクラウドの進展のほうが強かったように感じます。

 

パブリッククラウドでは、特に基幹系システムでは超えなければならない課題が幾つもあるため、敷居の低いプライベートクラウドからまずは導入しようという動きが強かったように感じます。

 

※業務システムのクラウド化は、「パブリッククラウド導入しました」みたいな公表ニュース以外の動きで面白い話もあるのですが、さすがにブログでは書けない。。。

 

まとめ

予想に対して振り返りですが、全体的にはほどほどの的中と言った感じです。

 

改めて思うのが、政治や社会動向の影響はかなり大きいですね。

消費税増税が延期となったりしたことを考えれば、来年は又違った様相となりそうな気がします。

 

以上

IT関連メディア亡国論

極言暴論スペシャル! - SI亡国論(その4)- 日本の成長に向けITベンダーの9割は要らない:ITpro

 

 過去2回に渡り、SI亡国論と言いつつ、適切な問題設定を行っておらず論理展開に問題があることを指摘しました。

 

世界の中での日本のITサービスの評価 - プロマネブログ

 

システムは「人間」が使うということを甘く見るべからず - プロマネブログ

 

元の記事は4回に分かれてますが、そろそろ書くのも飽きてきたので最後の指摘を書いておこうかと。

 

今回の記事は過去分の記事とほとんど重複しているので、4回目だけに記載されている内容についてだけ突っ込んでおきます。

※正直、重複だらけの文章なので4回に分けたのって意味があるのかと思うぐらい水増しした文章なのですが。。。いいのか。

 

「マーケティングができないITベンダ」という言葉に見るビジネスの理解度

 

「後追い」から「御用聞き」への転換

・・・

マーケティング能力の無い日本のITベンダー

・・・

マーケティングができないITベンダーが

 

過去2回の指摘でも思ったのですが、この人は本当に日経の記者なのだろうか。

あまりにもビジネスモデルを理解してなさすぎる。

 

 (1) 一般消費者向けの商品・サービスを主に販売するB2C(Business to Customer)モデル
 (2) 他の企業・組織向けの商品・サービスを主に販売するB2B(Business to Business)モデル

 (a) 需要の予測にもとづいて、商品・サービスをあらかじめ用意しておく見込型ビジネス

 (b) 個別の注文を受けてから、商品・サービスを提供する受注型ビジネス

 

基本的フレームワークで4種類のビジネスモデルを理解する : タイム・コンサルタントの日誌から

 

佐藤さんの過去のエントリで丁度説明したいことが記載されている物がありましたので、参考まで。

 

SIer、要は「B2Bでシステムの受託開発する企業」をベースに言ってしまえば、これらの企業群のビジネスは「受託」という言葉に代表されるように、顧客需要がありきの商売となってます。

つまり、マーケティングと言う概念が存在しないわけですね。だって、幅広い市場(マーケット)からお客をかき集めるのではなく、目の前のお客さんの需要を掘り起こして仕事を増やす、というビジネス原理で動いているから。

 

こういった業界で必要なのは、マーケティングではないです。

元記事の御仁自ら書いているように、「御用聞き」言い換えれば「コンサルティング」なんですね。

 

だから、1990年~2010年ぐらいまでの間、SIerにもコンサルティング機能を強化しなければならないってことで、SIとコンサルティングファームの合併が行われたわけですね。

  • 1988 NRINCC(野村コンピュータシステム)の合併
  • 1989 DIRとDCC(大和コンピュータサービス)、DSS(大和システムサービス)の合併
  • 2007 アビームとアビームシステムエンジニアリングと合併
  • 2010 日本IBMIBCSの合併

適当に列挙しましたが。

 

てなわけで、「マーケティングができないITベンダー」なんて言った瞬間、ITベンダーのビジネスモデルを理解してないことを露呈することとなるわけです。

 

 多重下請け構造破壊が確実な中小ベンダの利益となるのか? 

 

中堅中小のITベンダーには、もっとチャンスがある。ようやく多重下請け構造から抜け出す絶好の機会が訪れたからだ。同業のITベンダーやユーザー企業のIT部門に営業するのではなく、ITを活用した新サービスの立ち上げを目指すユーザー企業の事業部門にスピード開発を提案してみるとよい。

 

なるほど。これが実現すれば素晴らしい。

でもね、自分で書いてますよ。

 

下請けや孫請けなどの受託ソフトウエア開発会社は、メインフレーム時代から変わらぬビジネスモデルだ。と言うか、ビジネスモデルと呼べるほど特別なことをしているわけではない。経営者らの属人的なツテを辿ってソフト開発を請け負い、必要に応じてその一部を外注に出す。このようにして多重下請けの連鎖を作り出してきた。

 

 この点については一部同意できる部分があります。

特に、中小のソフトウェア開発会社は、所謂元請けと呼ばれるSIerと比較し、営業力が弱く、適切な契約形態を定義するためのビジネスモデリングに弱い場面をしばし見かけます。

 

例えば、以前指摘したこんな記事

「価値創造契約」は対価の設定が問題では無いだろうか - プロマネブログ

 

こういうビジネスモデル化を行うのも一種のコンサルティングや営業力になるわけですが、こういった機能が弱いなーと感じる場面がしばしあります。

 

さて、このような状況下で御仁が語るよう、多重下請構造がなくなればどうなるか。

 

とまあ、このような形で、米国における多重請負構造は、オフショアの台頭により中小ベンダにダメージを与える形で縮小したと考えられます。

米国IT業界に過去あった多重下請構造、それが破壊された理由 - プロマネブログ

 

アメリカの事例を見れば明らかです。10年近く前に出版された「MY JOB WENT TO INDIA」を見れば、SIerやWEB系企業など、ありとあらゆる企業でプログラマがインドオフショアに置き換えられた事実があります。結果、中小ベンダが壊滅的な状況になったりしました。

 

個人的な試算ですが、おそらく多重下請け構造が解消されると同時に、日本のIT投資がおおよそ1.5~3倍程度に膨らまなければ、大量のエンジニア失業者を生むんじゃないかなと予想してます。

 

9割減ると言っても、それだけのITベンダーが全て消えると言っているわけではない。 

残存者利益を狙った規模拡大のためのM&A(合併・買収)もあるだろうし、別のビジネスモデルに転換するITベンダーも出てくるはずだからである。

 

消えない理由が甘すぎる。全てがサプライサイドの事情ばかり。それで解決できるのなら苦労はしません。もうとっくの昔に解決してます。人間を窮地に追い込めば、勝手になんとかなると思っているのかね。ただのネオリベですか。

 

それこそマーケティングできちんと分析したほうが良いんじゃないかな。

 

普段、「アメリカが~」って出羽守ぶりを発揮しているのであれば、アメリカで起きた事情が日本でおきるぞ、って語ったほうがいいんじゃないか。

都合がわるいことだけ目をつぶるのは如何かと思います。

 

まとめ

毎度のごとく長くなってしまいました。

 

色々書いていて思ったのですが、もしかしたらこの御仁、煽りとか抜きで本気で「SI亡国論」を信じているのかもしれないと思いました。

ただ、本記事を含む3回の指摘を行ったように、見ている内容があまりにも表層的なものだから、的はずれな結論だけが積み上がってます。

それこそ、安易な論理展開でSIerだけでなく、ITエンジニアの不利益にもつながるような。

 

悪いことを悪いという批判、問題提起は必要だと思います。IT関連メディアとしてそういうスタンスをとっても良い。ただ、問題提起を行うのであればきちんとした分析と理解は必要だと思います。

 

でなければ、まさに「地獄への道は善意で舗装されている」って言った感じで、ただただ問題を振りまくだけの存在となるでしょう。

まさに、IT関連メディア亡国論です。

 

 

 

以上

 

 

My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド

My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド

 

 

システムは「人間」が使うということを甘く見るべからず

 

極言暴論スペシャル! - SI亡国論(その2)- 日本企業のイノベーションを20年遅れにした罪:ITpro

 

前回*1に引き続き。

 

「日経」記者のSIerビジネス知識の欠如

ITProはいちおう日経系列なので、そこで働く記者も一般レベルのビジネス知識を持っているかと思いたいのですが。。。

 

例えばERP導入。本来なら可能な限りノンカスタマイズで導入したほうがユーザー企業の経営に資するのだが、IT部門事業部門の個別要求に抗せず、アドオンの量を膨らませてしまう。そしてITベンダーにとっては、そのほうが開発量が増えて儲かる。しかも、その後の保守も膨大なものになり、それを請け負うことでさらに儲けることができた。 

スクラッチで開発したシステムなら、なおのことだ。

 

上記文章。これを日経記者が書いちゃうのか。。。これでよくITビジネスを語れるなあ。

 

うちもそうだけど、大体のSIer、特に元請やっているような企業の有報見ると、しばし「不採算案件の発生による収益減」なんて文言があちこちで見られます。

ぶっちゃけて言えば、受託開発案件で炎上など起こしてしまうと、仕事は完了しないのに再委託のパートナーさんを雇用しなければならず費用が膨れ上がる、要は赤字化してしまいます。

なので、会社によっては微妙に戦略が違いますけど、大体の方針として極力パッケージやASPなどへノンカスタマイズで導入しようとしているんですね。

事業説明資料などでも「自社のパッケージ販売の拡大」や「自社サービスへの誘導」、「SAPの販売拡大」みたいな感じで書いてあることもしばしば。

同じ問題解決を行うのであれば、低リスクな道を選ぶようにするのが当然ですがな。

 

業界を語りたいと思うのなら、決算資料を見るなんて常識中の常識なのに。

まかりなりにも日経に関係している記者が読んでないとは思いたくないのですが。。。どうだろ。

 

システムは「人間」が使うということを甘く見るべからず

ERPを徹底的にカスタマイズして導入した、ある大手製造業の経営者が「ITコストが膨らみ、まるでERPのために仕事をしているようなものだ」と嘆いていた

 

なるほど。製造業ではEPRをカスタマイズ導入してコストがかかってしまったと。

では、ノンカスタマイズで「大手」製造業に対応できるERPは存在しているのでしょうか?過分に耳にしたことはありません。

では、業務ギャップが存在するERPをノンカスタマイズで導入した場合、当然オペレーションコストが発生するわけですが、それとITコストを比較した場合の金額差は?多分、KPIは取られてないんじゃないかな。

 

ITコストは金額として見える反面、カスタマイズも何もしなかった場合のオペレーションコストの増加分は、きちんと計測しなければ見えない。なので、人間のコストを甘く見積もる傾向があるんですね。

で、きちんとシステム投資すれば解決できるようなことでも、デフレ環境下では人間のコストの方が安そうに見えるもんだから、ERPをノンカスタマイズ導入し力技の長時間労働で対応しようとして結果、現場が疲弊するなんて事例はいくらでも散見されます。

 

上記の事例を示唆する話があります。

世界でもトップを取るような日本企業の業務を分析し、米国対応パッケージとして開発したシステムを米国に導入しようとした事例の話。

米国会計基準ヤード・ポンド法など、アメリカで導入するために必要となる標準化を行いいざシステムを導入したものの、結局米国側でフルスクラッチシステム開発となってしまいました。当然、コストはかさんでしまうわけです。

 

合理的なはずのアメリカ人がなぜ?

 

実は、ほんの些細な日米の商習慣のずれを利用者が感じてしまい、業務効率が上がらないと判断したことが原因だったりします。

 

アメリカ人だって、自分らの商習慣に合わなければ、どんなに優れた業務ノウハウがつめ込まれたパッケージであれ、当たり前のように使わない選択を選びます。日本企業がスクラッチを選んでしまうように。

 

なんでもかんでも標準化すれば良いなんていうのは、人間を無視した暴論としか言いようがないです。

 

業務の標準化に欠かせない法と自主規制団体の存在 

 

欧米のユーザー企業の多くは20年ほどの歳月をかけて、ERPなどを活用して業務改革を進め、業務プロセスの標準化を成し遂げている。これにより単に業務の効率化を極大化させただけでなく、経営の見える化もほぼ達成した。さらに中国など新興国の企業もERPをほぼノンカスタマイズで導入することで、一気に欧米流の効率経営を手に入れつつある。

 

OK。そのように語るのであれば、ぜひとも日本の企業が欧米の商習慣を導入することで経営効率化できることを示していただきたい。

当たり前ですが、1社だけ導入しても生産性は上がりっこない。貿易などで先進国との取引が多い中国のような新興国企業なら、個社で導入しても取引先の多くが海外であれば、さほど苦労なく生産性を高めることができます。

 

日本のような経済がそれなりに大規模な物となった国では、国内の取引も活発です。

となれば、社内業務の標準化を行うためにも、取引先を含めて商習慣の標準化を行わなければなりません。

 

 

意外と知られてないのですけど、日本でも特にERP等のパッケージが導入され、システムが高度に標準化された業界があります。

 

メガバンクを除いた地銀、証券、損保といった金融業界です。

 

これらの業界では、共同利用型のASPSaaS)やパッケージの利用率が高く、おおよそ5~9割近くの企業が、標準化された業務システムを利用するようになってます。

日本のパッケージ利用率が1割以下であることを考えれば、驚異的な数字です。

 

前述した業界は、所謂「規制産業」です。商取引や業務内容などは法律によって厳しく制限されてます。

なので、各社の業務内容は同一とならざるを得ない(工夫のしようがない)ため、自然とASPやパッケージを利用すると言った選択を選んだ形になったわけです。

 

 

1ユーザ企業の業務システムを標準化したくても、その先の業界全てを標準化することには不可能です。となれば、無理に標準化を行ってしまうとかえって効率が低下してしまう。このような状況下で、効率低下を覚悟でシステムの標準化をユーザ企業が選択することは厳しいでしょう。

 

結局のところ、こういった標準化というのは、業界団体や法といった政治の世界の話。

 

それを行わないのはSIerが悪いというのは、まさに暴論。 

 

 

まとめ

今回の話は、もう言ってしまえばSIerに関係ない話をSIerが悪いと入っているような話、ユーザ企業がどうしようもない部分をユーザ企業の責任というばかりで、いちゃもんとしか言いようが無いレベルです。

 

こういう話って、普通は何も知らない素人が思いつきで語る話であり、IT関連のメディアがきちんと分析した説明を語るってのが正常な世界じゃあ無いのかな。

でなきゃ、IT業界に潜む問題を解決できないどころか、問題を深化させるだけでしょう。

 

「SI亡国論」なんて話ではなく「IT関連メディア亡国論」じゃないのか、と。

 

もう一つの記事*2に対しても、指摘を書こうと思いましたがもう体力の限界なので今日はここまで。

 

以上

 

 

世界の中での日本のITサービスの評価

極言暴論スペシャル! - SI亡国論(1)- 日本にも世界にも全く貢献できないIT業界:ITpro

 

年末、仕事がたてこんでおりすっかりブログ更新をサボってました。

 

反応するのもバカバカしくなってきたのだけど、こういう分析も何もない思い込みだけの記事を垂れ流すのを見過ごすのも精神衛生上よろしくないので。。。

 

世界の中での日本のITサービスの評価

ICTイノベーションを競う「global ICT awards」で日本企業がわりと活躍している話 - プロマネブログ

 

昔書いた上記の記事がまあ答えなのですけど、日本のエンタープライズシステムって世界の中でもかなりの好評価を得ているんですよね。

エンタープライズシステムやWEBサービスなど各種ITサービスの中で、イノベーティブであると評価されたシステムの数で言えば、世界でも2番めの評価。(一位は当然のごとくアメリカですが)

 

とかくエンタープライズシステムの様なB2Bで使われるシステム、利用者が特定されたシステムは、B2Cのような「わかりやすい」形で見えるようにはなってません。ミドルウェアや言語みたいに、広く技術者に知れ渡っているようなものでもない。

エンプラの分野では、内部のアーキテクチャなどがオープンとなっておらず、一子相伝の秘技となって情報公開されないことも珍しくない。傍から見たらよくわからんだろうなとは思います。

 

日本のITサービスで世界に評価された画期的な技術やサービスを知らないからって、存在しないわけじゃあ無いかと。

それこそ、視野の広さの問題じゃないかな。

 

 

 

日本のSIerサムスンを比較して何がしたいのか?

どうも、世界で戦えるIT企業の姿が文中でもぶれすぎている。。。

アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト

コンシューマ?OS?

 

韓国のサムスン電子、中国のレノボやファーウェイなど

ハードウェア?モバイル機器?

 

インド側から見ると景色が変わる。圧倒的なコスト競争力で欧米、そして日本のシステム開発、プログラミング需要を一手に引き受ける

アウトソーシング

 

これらの企業とエンタープライズシステムを作成するSIを比較して何がわかるというのか?

単にIT業界と言った世界でも、取り扱う製品・サービスの違いで競合、戦い方、世界への関わり方が違うわけで。どうも、この御仁は気持ちが先行してしまい、論理展開をすっ飛ばしているみたい。

 

日本のIT業界としてSIの仕事と比較したいのであれば、同じくエンタープライズシステムの分野で語らなきゃ比較できない。

同じ輸送機器だからって、乗用車とトラック、バイクに電車を比較しているようなもんですよ。

 

ちなみに、エンタープライズシステムの分野では、多くの国では地場のローカルベンダーが中心に活躍してます。一部の国では、IBM等の多国籍ベンダが圧巻している国もあるけど。

 

参考:日本のIT業界を「SIガラパゴス」と言う前に知っておきたい海外ベンダ事情 - プロマネブログ

 

まあ、ビジネスソフトの分野で語った瞬間に、記事としての煽り成分がなくなってしまうので書けない事情もあるのかな、という気もします。

(純粋に何も考えてないような気もするけど)

 

同一文章内の矛盾を文章のプロが書くのはいかがなものか。

1ページ目の

画期的な技術を生み出すことで新たな価値を提供するのがIT産業である

 

に対して、4ページ目の

低コストも企業が提供し得る付加価値の一つである。その意味ではインドにも世界に貢献するIT産業が存在するわけだ。

 

とりあえず、同一文章内での整合性は取ったほうが良いのでは。

一応、文章のプロなんだし。

 

まとめ

毎度のごとく、煽り成分たっぷりな反面きちんとした内容になっておらず、結局煽っておしまいという感想の文章で微妙な感じでした。

 

今回の記事、とかく出羽守ぶりが際立った文章でした。

こういった表現、正直好きではありません。

 

「日本のITベンダは米国ベンダの猿真似だ」と言いつつ、語る言葉は「世界では~」「米国では~」、「欧米では~」。

知ってる限りの話でIBM等の多国籍ベンダを語っている反面、米国や欧州のローカルベンダの姿は露も見えない。日本をガラパゴスと語れれば、世界のベンダを正しく分析することは放棄してもよいのだろうか。。。

 

 

まともな情報分析もできないからこそ、「日本の雑誌メディアは米国雑誌メディアの後追いで滅亡の途を進んでいる」ということになるんじゃないかな。

 

以上

 

日本でオフショア開発が普及するとプログラマの給料が上がる仮説

 

ここ数日「アメリカのプログラマの給料が高い!」という話題が飛び交ってますね。

まあ、給与の話はだれでも気になりますよね。私も気になります。

 

日本でオフショア開発が普及するとプログラマの給料が上がる仮説

 

 

もしかしたら、アメリカのプログラマの給料が高い理由って以前書いた記事に大きく関係するんじゃないかなと思ったので、ちょいとイメージを整理してみようかと。

 

アメリカの20年前に起きたオフショア活用の拡大と同様の事態が、日本人プログラマ*1の人とお金の動きに与える影響イメージを図示してみます。

 

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かなり適当な絵ですけど。。。

 

ざっくりと説明すると

  1. 国内のプログラマの仕事のうち、日本人プログラマでは採算の合わない仕事がオフショアへ移管。逆に、日本人が必要となる高スキルな仕事でのプログラマが残る。
  2. 一部の高収入なプログラマを除き、多数のプログラマは仕事を失う。一部の資金はオフショアの外注費となるが、オフショアは人件費が安いため、結果として余剰資金が発生。
  3. (IT投資意欲が減少しない限り余剰資金を国内プログラマの雇用に再投資。平均給与が既に上昇している状態なので、上昇後の給与をベースに再雇用。仕事を失ったプログラマの一部が新たな仕事に。

といったイメージとなります。まあ、まんまアメリカの昔話を日本に当てはめただけです。

 

つまり、日本のプログラマの仕事がオフショアに移った場合、失職するプログラマが多数発生しますが、それでも残ったプログラマの平均年収は今よりも上がる形になるわけですね。

 

 

上記図の最初で、プログラマの人数と年収を企業規模ごとに変えた形で図示してます。これは、政府統計から、プログラマ給与の基礎データを抽出したデータを参考にしたためです。*2

 

企業規模 平均年齢 人数 平均月収 賞与 年収
1000人以上 35.7 15890 ¥376,000 ¥1,371,100 ¥5,883,100
100~999人 31.3 27250 ¥313,400 ¥615,800 ¥4,376,600
10~99人 31.7 38970 ¥275,200 ¥426,600 ¥3,729,000
平均 32.3 合計 82100 ¥307,400 ¥672,100 ¥4,360,900

 

上記の表からの推測ですが、もし、今現在の状態で日本人プログラマがアメリカのプログラマと同程度の待遇(物価や社会保障の差異を考えると平均年収が600~800万円ぐらい)を得ると想定した場合、日本人プログラマは現在の2~3割ぐらいしか残らないんじゃないかなって気がします。

※要は、上記の大企業で年収600万円相当をもらっているプログラマが、スキルの高い国内残存プログラマにそっくり入れ替わるイメージ。

 

ちなみに、アメリカではIT投資意欲が高く、追加予算がどんどん振り分けられた形となります。当然、プログラマ需要が高まったわけですけど、上記の失職したプログラマではなく、H1‐Bビザを活用してオフショアや国外の優秀なプログラマを呼び寄せる形になったとのこと。

結果、現在のシリコンバレーの移民および移民一世に比率は「64%」になったとのことです。*3

 

 

まとめ

まあ、色々書いてみたわけですが、アメリカのITエンジニア事情にあこがれて日本も同じようにしようとした場合、しわ寄せがどこかによっちゃうんだろうなと推測できるんですよね。

なんで、「アメリカのエンジニア事情は素晴らしい。日本もマネすべき」ってのを聞くと、どうしても身構えて慎重に考えてしまいます。

 

こういうときに、誰もが幸せになれるような画期的なアイデアが浮かべば一商売できそうな気がするんだけどなあ。なかなか難しい。

 

以上

 

 

 

*1:厳密にはソフトウェアデベロップメントのスキルを持ったソフトウェア開発者なんですけど、便宜上

*2:統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103

*3:シリコンバレー発 ビジネス最前線